CONSENT furniture
控えめな看板。
都心部からそう遠くない良い立地にその家具屋さんはありました。
卒業生の長岡さんは、三週間ほど前からここに勤め始めたみたいです。
以前の工場とは異なり、高度な技術を必要とされる仕事に手間取っている様子でした。
お店は無いのですが、その空間の雰囲気からも高いセンスを感じました。
今、私の所の学生には職人になりたいという人が多くいます。
個人で、椅子塾夏期講習へ参加したり、リペア家具の講習会に行ったりと三回生から活動的です。
やはり、みんな自分の手で何か確かなものを作りたい。
目に見えないものを操作してお金を稼ぐのではない。
自分のしていることが誰のためになっているのかよくわからないような事をしたくない。
そんな、生きている実感の乏しい時代にあるからこその反動なのではないかと思います。
ゲーム会社に勤めたような人も、職人に憧れて転職を目指す人も多いようです。
やはり、木や土といった自然のものと向き合うことによって自分と向き合うことができ、
自分のこと、大切なもの、人間のことがわかるような気がします。
そして、本物の素材に触れていないとわからない情報もたくさんあるのです。
工房のサイズもちょうど良く、とてもきれいでした。
木で家具を作るにもいろいろあります。
ここの片岡さんの作る家具は端正で無駄が無く、
割と逃げの効かない攻めの作りをしているなと感じました。
それは、本当に長く使うために、作る時の手間を惜しまない姿勢でした。
職人さんは多くいますが、ほとんどが腕を磨く必要のない仕事ばかりしているそうです。
かんなの刃を研いで、木を削る。
ただ、それだけでごまかしようの無い仕事です。
作っているものがそこにあり、それで言っているのですからそれは説得力があります。
長岡さんのいままでの、ここでの苦労話や、主人の片岡さんの熱い話を聞けて本当に良かったと思います。
長岡さんも本当に運良く、良い工房に巡り会えて良かったなと思います。
帰りの電車で手の上に蟻がいました。
蟻なんて最近よく見る余裕もなかったですけど、蟻でこんなに楽しいかと思いました。
子供の頃から虫も触らず、ゲームをしていては心配ですね。